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第十五話:公開研究会でなかなかみることのできない総合の授業場面

現在、週に2校平均でどこかの学校の授業研究に入っている。

今日は静岡県湖西市立鷲津小学校の堀尾光宏教諭の総合的な学習(4年)の授業公開と検討会に講師として訪問した。この授業は昨年から関わっている西縁総合教育センターの総合的な学習部会の研究員への指導の一環だ。



単元名は「鷲津のほこり、豊田佐吉に学ぼう」だ。ねらいは3つあるが、特に「豊田佐吉の偉業や発明、ものづくりなどに関心をもち、進んで調べたり、アイディア品を作ろうとしたり、発明のすばらしさを伝えようとしたりする」というものだ。

単元は74時間に及び、大きくわけると「1)佐吉について知ろう」「2)発明にちょうせんしよう」「3)発明の大切さを伝えよう」の3本だてになっている。

公開の本時は、「3)発明の大切さを伝えよう」の1時間目だった。第二次の最後までに外部の専門家の方などにアドバイスや指摘をもらいながら、子どもたち個々が自分のこだわりのアイディア品を完成させ、今後の柱になる学習問題を話し合う、という場面だ。



授業はこれまでの場面の写真入りの教師の用意した「書き込みシート」に各グループで学びになったことを想起しながら、これから学習問題にしたいことを相談することからはじまった。

子どもたちからは、最終的には、「他の発明家のことも追究したい」「(自分の作ったアイディア品を)本物にしたい」「下級生に伝えたい」など、それぞれの思いを共通テーマとして出してきた。教師の方は、いずれ「町づくり」の活動につなげたいという思惑から「佐吉そして、発明のすばらしさを地域の人に伝えたい」という流れにもっていこうとしていた。それでもていねいに子どもの発言をくみ取りながら、インタビューのビデオを出すか出さないかを授業中に判断しながら、共通テーマへの落としどころ(収束地点)をさぐっていった。



総合では、子どもたちの思いに寄り添いながら、いっしょに学習問題を作っていくことが重要だ。これを教師からの一方的な課題提示のみにしてしまうと、指示待ちの子どもたちになってしまい、総合の醍醐味は失われる。

しかし、子どもたちの思いのみにまかせていると、特に今回のように4年生くらいではどこに流れていってしまうかわからない。つまり、難しい場面なのだ。日ごろの子どもたちの育ちもファシリテーターとしての教師の力量も問われる。しかし、総合の単元を進めていく中で、節目になる重要な場面であることもまちがいない。



以上のことから、なかなか研究授業のような公開では、このような場面を見せてもらえない。たしかに発表の場面あたりの方が無難なのだ。教師の想定できる範囲でたいていは進めていける。

しかしだからこそ、堀尾教諭が本時の授業場面を公開した意味は大きい。つめかけた多くの参観者もたぶん「自分なら〜している」「あの場面では〜すべきだった」と、いろいろな意見をもったはずだ。そういう考えをめぐらせる授業だったのだ。

こういう公開授業が今後も見ることができることを願ってやまない。



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あさっては日帰りで高知市内の小学校に入る。

大好きなぎょうざ屋台(夜の8時からなんだよね。屋台のオープンが)に行けないのが心残りだ。




コメント (4)

匿名:

昨年まで関わっていた五年生の総合でも同じような悩みを常に持ちながら進んでいました。子どもの思いと教師の意図、このバランスがとても大切だと感じています。まさに教師はファシリテーターなんですね。沖縄でも総合の公開授業はポスターセッションを含めた発表に集中しています。でも僕達が求めているのは導入やその過程・途中経過だったりします。

中川妹@広島:

「学習問題を話し合う」・・・これが難しいんですよね。勤務校では、来年度社会科の全国大会を行うのですが、昨日のリハーサル大会での研究授業がこの場面でした。教科と総合は違うのかもしれませんが、資料の提示の仕方とか発言の取り上げ方に、もっともっと工夫がいることを実感しました。来年度に向けて、ヒントになりそうなこの授業を見たかったなあと思いました。

ひらい@おかやま:

 岡山市立西小学校では11月12日に公開授業を行います。総合は2本。やはり,問題づくりの場面ではありません。ここの公開はどういうふうに流れていくかとてもこわいので,無意識のうちに除外してしまっているのでしょう。いつもこの場面で落としどころにもっていくのはどうしたらよいのか悩みます。ファシリテーターとしての力量をつけていかなければと思いながら読みました。

高知の餃子屋台(まっちゃん)は,本当においしいんですよね。あの餃子は最高です。って,みなさん授業の話なんですが・・(笑)

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2004年10月14日 02:07に投稿されたエントリーのページです。

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